今年も無事に初詣することができました。
かつて8万社あると言われていた神社の数は、直近30年で約2700社減少し、現在では7万社台に突入しています。さらに、2040年には約4万社にまで減少すると予測されています。
この減少の主な原因は、我が国の人口減少にあります。氏子や参拝者の減少による経済的な課題や、後継者不足の問題が顕在化しています。
2016年時点で、全国の神社の約6割が年間収入300万円以下であり、神職のみで生活できる人は全体の約1割程度に過ぎません。
一方、寺院に関しては僧侶の平均年収が約514万円と報告されていますが、これは大規模な寺院や檀家の多い寺院の場合です。小規模な寺院では年間収入が100万円以下のところも多く存在します。
それでも、多くの神社や寺院が地域の文化や伝統を守るために努力を続けています。特に注目されるのは「DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進」です。
DXの成功事例
熱田神宮(愛知県名古屋市)
賽銭やお守りの購入にキャッシュレス決済を導入し、参拝者の利便性を向上。特に若い世代や外国人観光客から支持を得ています。
神田明神(東京都)
オンライン参拝やデジタル御朱印のサービスを提供し、遠方に住む人々や忙しい人々の参拝を可能に。収入の安定化にも寄与しています。
伏見稲荷大社(京都市)
参拝者のデータ管理や経理作業をデジタル化し、事務作業の効率化と運営コストの削減を実現しています。
寺院においても、公式アプリでの多様なコンテンツ提供(築地本願寺・東京都)、メタバース上に仮想神社を構築(鳥飼八幡宮・福岡市)、VR技術を活用した仏教文化遺産ミュージアムの公開(三井寺・大津市)といった取り組み事例が確認できます。
オンライン参拝・参詣のような取り組みは、高齢者にとっても大変助けになるでしょう。
そこでDX以外にも、有効となり得る施策を6つほど考えてみました。
6つの施策案
1.地域コミュニティとの連携強化
地域住民との密接なつながりを再構築し、寺院や神社を地域活動の中心的な場とします。高齢者向けの集いの場や、子どもたちの学びの場を提供するほか、地域の文化活動を主催・支援することで、地域に根差した存在としての役割を強化します。
2.宗教的価値の再定義と発信
寺院や神社を「精神的な拠り所」として再ブランド化します。ストレス社会における心のケア、瞑想やリラクゼーションの場としての役割を強調し、現代人のニーズに応えます。若い世代へのアプローチにはSNSの活用が効果的であり、増加する外国人(観光客や居住者)への理解促進活動も重要です。
3.参拝者の体験価値向上
単なる参拝にとどまらず、参拝者が「心のリセット」や「癒し」を体感できるイベントを企画します。たとえば、寺院や神社での「瞑想体験」「写経ワークショップ」や、音楽とのコラボレーションイベントが挙げられます。また、お守りや御朱印のバリエーションを増やすことで、幅広い参拝者の満足度を向上させます(神田明神の先行事例が知られています)。
4.財務運営の見直しと透明化
クラウドファンディングを活用して、修繕や地域活動、教育プログラムなどのプロジェクトを支援してもらう方法もあるのではないでしょうか。この際、収支や使途を公開し、透明性を高めることで信頼を築きます。日本国内でも寄付文化が広がりつつあるため、この方法は特に効果的です。
5.地域資源の活用
地元の特産品や手作り商品を寺院や神社(オンライン含む)で販売することで、地域経済に貢献しつつ収益を得ます。また、寺院の敷地内で有機農業を行い、その収益を活用するほか、地域の農産物を使った料理教室やワークショップを開催し、地域住民とのつながりを深めることも可能です。
6.ボランティアや地域貢献活動の強化
環境保護や社会福祉活動など、地域に貢献するプロジェクトを寺院や神社が主導します。清掃活動などのボランティア活動の機会を提供し、特に若い世代を巻き込むことで地域への影響力を高めます。
私たちにとって最も重要なのは、一人ひとりの意識を変えることです。たとえば、初詣で賽銭箱に5円玉を入れて願い事をすることが慣習化していますが、参拝の基本的な目的は神様への感謝を表すことです。神々や祖先に対して敬意を払い、日々の恵みに感謝する姿勢を持つことが求められます。お願い事は我欲を叶えるためではなく、自分の努力に神様の力を授かるためにするものです。
また、神社や寺院が今後も地域に存在し続け、子どもや孫たちと共に初詣や七五三に訪れる未来を願うなら、そのために私たち自身がどのような形で支えるべきかを考えるべきです。たった5円玉ではなく、神社や寺院の維持と発展に真剣に貢献する意識が必要ではないでしょうか。
BBDF 藤本