「自立」までに存在する4つの壁

· 組織,人材,マネジメント

Oxford Languages(Google日本語辞書を提供しています)で「組織」と調べると、次のような定義が出てきます。

【組織】 1.《名・ス他》ある目的を目指し、いくつかの物や人で形作られる、秩序のある全体。そういった全体としてのまとまりを作ること。また、その組み立て方。 2. 生物《名》同じ系統の細胞が集まって一定の働きをする器官。

つまり、組織が一定の動きをするためには「秩序」の存在が必須だということになります。

その「秩序」の存在を背景として、組織を構成するメンバーは「自律」し、やがて「自立」します。

よく混同されがちな「自律」と「自立」ですが、それぞれの字を見ると、意味の違いが明らかです。

・「自律」:自分を律すること =「行動」
・「自立」:ひとり立ちしていること =○○している、という「状態」

つまり、「自律」という行動の結果が「自立」という状態に繋がるのです。

「自立」したメンバーが多い組織は強いと言われます。その理由は以下の点にあります。

1.迅速な意思決定
自立したメンバーは、自分の責任範囲内で意思決定ができるため、上司や管理者に依存しません。このため、変化の速い状況や緊急事態にも迅速に対応でき、組織全体の柔軟性と機動力が向上します。

2.イノベーションの促進
自立したメンバーは、自分の役割を超えて問題を考え、改善策や新しいアイデアを提案できます。自由に意見を出し合い、試行錯誤することで、組織内で革新的なアイデアや新しい方法が生まれやすくなります。

3.リーダーシップの分散
自立したメンバーが多い組織では、リーダーシップが一部の人物に集中しません。そのため、どのメンバーも問題解決に向けて主体的に動ける状況が整い、組織全体が一丸となって目的達成に向かって動くことができます。これにより、より多様な視点やアプローチが組織に反映されます。

4.メンバーのモチベーションと成長
自立性の高い組織では、メンバーが自分の仕事に対して責任感を持ち、主体的に取り組むため、仕事に対するモチベーションが高まります。また、自分で判断し、問題を解決する経験を積むことで、個々のメンバーが成長します。このような成長が組織全体に好影響を与えます。

5.変化への対応力
自立したメンバーが多いと、組織全体が柔軟に変化に対応できるようになります。例えば、環境の変化や外部からの圧力に対して、メンバー一人ひとりが自分の役割を理解し、自分で行動するため、組織としての対応力が高まります。

6.コミュニケーションの効率化
自立したメンバーは、他のメンバーや部門と積極的にコミュニケーションを取り、問題を解決し合う傾向があります。これは、指示を待つだけでなく、協力して自分たちの目標に向かって進む文化を生むため、組織内のコミュニケーションが円滑になり、結果的に効率的な活動が可能になります。

7.組織全体の責任感の強化
自立したメンバーは、個々の業務やプロジェクトに対して強い責任感を持ちます。これにより、組織全体の責任感が高まり、問題が発生した際にも、個人やチームが積極的に解決策を見出す文化が醸成されます。

このような組織強化の観点から、組織にとって理想的なのは、メンバーが「自立」した(=自ら○○している)状態であり、その状態に至るための各メンバーへのサポートが重要だと考えます。

このことを考える過程でひとつ、大事なことに気づきました。それは、「自立」までには4つの壁が存在する、ということです。

■第1の壁:「知識の壁」
何事も最初は「知らない」状態から始まります。これを「知っている」状態に持っていくためには、まず知識を得ることが必要です。

■第2の壁:「行動の壁」
「知っている」からと言って、「わかっている」ことにはなりません。わかるためには、実際にやってみることが必要です。

■第3の壁:「技術の壁」
「わかっている」だけでは、何の役にも立ちません。「できる」ようになるためには、実践して技術を身につける必要があります。

■第4の壁:「習慣の壁」
単に「できる」のと「している」状態とでは、全く異なります。「している」と言うためには、習慣化する必要があります。

これらの4つの壁を越えて初めて「○○している」という「自立」の状態が完成し、組織強化につながります。

図式化すると、以下にようになります(GPTでVBAを作成し、自動スライド化しようと試みたのですが、まだ私には思うようにそれを実現する力がなく、普通に手動で作成しました。「技術の壁」です…)

自立までに存在する4つの壁(知識、行動、技術、習慣)

部下に対して「なぜ○○していないんだ!」と叱る上司がいますが、叱る前にすべきことがあります。それは、その部下がどの壁の手前で立ち止まっているのかの分析です。

本当にその部下は「できるのにしていない」のでしょうか?「わかっているだけで(実は)できない」のかもしれません。または、「知っているだけでわかっていない」可能性もありますし、「そもそも知らない」という場合もあるでしょう。その場合は、まずそこから教える必要があります。

サポートすべき内容は、状態(フェーズ)によりそれぞれ全く異なるのです。

「自分は今、この図式のどこに立っていて、次に行くには何の壁を超えなければならないのか」それを部下にわからせてあげることこそが「マネジメント」です。

そして、いずれの壁も超えるために必要なのは、メンバー本人の「意志の力(Will)」と「自律」です。まずはその有無を確認することが必須でしょう。

BBDF 藤本